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斎藤勇編『植村正久文集』 [書籍紹介・リスト]

植村正久文集(岩波文庫)第2刷(右)と第3刷(左)斎藤勇編、『植村正久文集』(岩波文庫2069-2070、青(33)-116-1)、岩波書店。

1939年第1刷
1983年第2刷
1995年第3刷(1995年春のリクエスト復刊)。

たぶん、1995年以降、復刊していない。


ちなみに、植村正久は 1858.1.15~1925.1.8 なので、2015年1月8日は植村没後ちょうど90年。


収録されている文章は以下の通り

-----ここから-----

1.宗教思想家評論
重厚の人ルウテル
カルヴィンの第四百囘誕生日
エフ・デヰ・マオリスについて(ヰは小書き)
黒谷の上人

2.時評
愛國、輿論、新聞紙
日本の基督教文學
支那日本の相違なる點
武人たる神學者
福澤先生を弔す
美服せる罪悪
最近死去せる名流
基督に於て死にし實業家

3.西洋文學論
トルストイ伯
トマス・カアライル
自然界の豫言者ウォルズウォルス
テニソンと其の詩
杜鵑一聲――ピッパの歌

4.譯詞
田舎鍛冶
白屋の土曜の夕
み惠ある光よ

5.雑
書翰三通
任職滿三十年記念會に於て
自叙傳(英文から邦譯)

-----ここまで-----

「エフ・デヰ・マオリス」はF.D.モーリスのこと。

「愛國、輿論、新聞紙」の冒頭には、「愛國とは何ぞ。・・・愛國の眞意は、國民を愛するに在り・・・。」とあり、「國民」に強調の傍印が付されている。そして、自国の過去をいたずらに愛重したり、その美粋を保つことではなく・・・というようなことが書かれている。

「武人たる神學者」は世良田亮の死去に寄せた追悼文。

「福澤先生」とはもちろん福澤諭吉

「美服せる罪悪」は星亨(植村の文章では「享」)という政治家の暗殺事件について。

「最近死去せる名流」は板垣退助と和田垣謙三。その次の「實業家」は6代目森村市左衛門(ノリタケカンパニーやTOTO、日本碍子の前身となる日本陶器合名会社を設立)。

「ウォルズウォルス」はもちろんワーズワース(あるいはワーズワスとも表記される)。

「杜鵑」は「ほととぎす」。「杜鵑一聲」の文章は、ブラウニングの『ピッパ通過す』の詩に寄せて。

「田舎鍛冶」には、ロングフェローの詩を「散文に譯して家庭の諭言となす」との添え書きがある。

「白屋の土曜の夕」の「白屋」には「くさのや」のルビ。Burnsの"Cotter's Saturday Night"の大意を訳出したもの。

「み惠ある光よ」は『讃美歌』(1954年版)の288「たえなる道しるべの光よ」の翻訳と解説。ジョン・ヘンリー・ニューマンのこの詞は、故郷を想うとかのロマンチックな内容ではなく、世に大飛躍をなそうと青年が抑えきれぬ志を持って門出をするときのような歌だと語る。

書翰三通は、長女澄江宛、アメリカ留学中の三女環宛、そして船中より季野婦人に宛てたもの。


あとがきの齋藤勇「植村正久先生の文學的寄與」は、『神学と教会』第2巻第1号(長崎書店、1935)に収録されたものに加筆したもの。

表紙や奥付では「斎藤」だが「編者序」とあとがきでは「齋藤」。

さいとう・たけし、1887.2.3-1982.7.4。


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