ルターの評伝 [書籍紹介・リスト]
2017年は宗教改革500年ということで、マルティン・ルターの評伝を読んでおこう。
基本は、次の3つ。
1.徳善義和『マルティン・ルター――ことばに生きた改革者』
- 岩波新書1372、岩波書店、2012年、183頁、720円+税。
- 現代の日本におけるルター研究の第一人者によるルターの評伝の決定版。
- → このブログでの読書メモ
2.小牧治・泉谷周三郎、『ルター』
- 人と思想9、清水書院、1970、214頁。
- 徳善義和の岩波新書が出るまでは、日本人による簡便な評伝は、これしかなかったが、今でも重要。
- 今は1000円+税。
- (清水書院の人と思想シリーズは、緑っぽいカバーだったが、順次、赤い新装版になっている。)
3.徳善義和、『マルチン・ルター 生涯と信仰』
- 教文館、2007、336頁、2500円+税。
- これは、徳善義和がラジオで語ったのをまとめた全12話。とても読みやすい。
- 巻末にしっかりした略年譜、日本語で読めるルターの著作(第2版2012年では徳善の『マルティン・ルター ことばに生きた改革者』(岩波新書、2012)まで掲載)、詳細な索引もあり。
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その他、最近の翻訳として次の3つがあるが、いずれも、わざわざ読むほどのものではない。
■リュシアン・フェーヴル、『マルティン・ルター――ひとつの運命』
- 濱崎史朗訳、キリスト新聞社、2001年(原著1988年版からの翻訳、初版は1928年)、356頁、2000円+税。
- 歴史学の分野のアナール学派の祖と言われるフェーヴルによる、政治、経済、社会、文化といった歴史的状況全体の中で描かれたルター像のようだ。宗教改革者であるルターの評伝という関心からはちょっとずれるかも。
■S. ポールソン『はじめてのルター』
- 湯川郁子訳、教文館、2008年(原著2004年)、302+8頁、1900円+税。
- 評伝というよりもっと、律法と福音とか、信仰義認とか、聖書解釈とか、悔悛の秘蹟の方向転換とか、自由意志の問題といった、ルターが取り組んだ神学的な展開を紹介したものだが、全体的取っつきにくい感じ。
■T.カウフマン、『ルター――異端から改革者へ』
- 宮谷尚実訳、教文館、2010年(原著2006年)、188頁、1600円+税。
- 原著2006年初版からの翻訳だが、2010年に出た改訂版の修正・変更はすべて盛り込まれているとのこと。
- ワイマール版ルター全集を縦横に引用しながら、ルターの生涯とその意味を解き明かしている。ルターの生涯についてすでによく親しんでいる教養人向けという感じなので、上記の岩波新書と清水書院でルターの生涯を頭に入れている人向け。分量は多くない。
- 最初は入っていきにくいので、40ページのルターの生涯が始まるところから読む(80ページまで)。
- 81ページ以降はルターの生涯のいくつかの面を取り上げる。多くの出版物を刊行したことについて、聖書翻訳への取り組み、学者としてのルターと説教者としてのルター、この世のこと(国家、他の学問、科学技術など)との関わり方、結婚の自由や自由の平等性に基づく全信徒祭司性、ユダヤ人観・トルコ人観など。
2017-07-06 22:00