アラン・コルバン編『キリスト教の歴史』 [読書メモ]
しばらく前の4月27日に、C.リンドバーグ(木寺廉太訳)、『キリスト教史』(コンパクト・ヒストリー)(教文館、2007年)を紹介したが、今度はこれ。
アラン・コルバン編(浜名優美監訳、藤本拓也、渡辺優訳)、『キリスト教の歴史――現代をよりよく理解するために』、藤原書店、2010年、534頁、4800円+税。
原著はフランス語、sous la direction de Alain Corbin, "Histoire du Christianisme: Pour mieux comprendre notre temps," 2007.
アラン・コルバン他55名のフランスの歴史研究者たちが、キリスト教史の中の約80のテーマごとに執筆を担当して、知的好奇心はあるがキリスト教を知らないフランス人向けに、大まかなキリスト教史を、どちらかというとカトリックの歴史を中心に、編んだもの。
1項目平均6頁弱。
目次は、藤原書店のページにある。
構成は標準的で、古代、中世、近代、現代の4部構成。
第Ⅰ部
第1章~第3章は、ナザレのイエスからパウロの伝道、ローマ帝国による迫害からテルトゥリアヌス、ローマ帝国のキリスト教国化。
第4章は「信仰を規定する」として、異端と正統、グノーシス主義とマニ教、4~5世紀の教義の形成。
第5章は「キリスト教組織の構築」として、使徒言行録以降の職制の発展、洗礼準備教育、聖餐、教会建築、週と暦、貧者への慈善活動、禁欲と修道院。
第6章は、バシレイオス、ナジアンゾスのグレゴリウス、クリュソストモス、ヒエロニムスと『ウルガタ』、アウグスティヌス。
第7章は、ローマ帝国内外のキリスト教の広がり。
第Ⅱ部
第1章「安定化と拡大」では、聖ベネディクトゥス、大グレゴリウスから、東方と西方の一致と差異、聖ベルナルドゥスとシトー会、そして、大聖堂について。
第2章では、十字軍、カタリ派(「善き人びと」とカギ括弧付きで表記)などの異端、異端審問、中世の歴史観・終末への関心、第4ラテラノ公会議、アッシジのフランチェスコ、托鉢修道会、トマス・アクイナス。
第3章「救いに向けての尽力」では、煉獄の概念、聖人崇拝・聖遺物、巡礼、聖母マリア(ノートルダム)、慈善事業の急増、聖体崇敬、ヤン・フス、神秘主義、『キリストにならいて』。
第Ⅲ部
第1章は宗教改革で、エラスムスとルター、急進派、カルヴァン、英国国教会のわずか4項目というごく簡単な記述。
第2章は「敵対と闘争」で、イグナティウス・デ・ロヨラ、イエズス会、異端審問所の変化、典礼、ジャンセニスムなど。
第3章はアメリカ、アジア、アフリカへの宣教、キリスト教教育、トリエント公会議、ローマとジュネーヴの比較など。
第4章はバッハ、聖書批評学の誕生(「聖書考証」という訳語はないだろう)、プロテスタントの敬虔主義や大覚醒など、守護聖人、ロシア正教。
第Ⅳ部
第1章の「聖書註釈の展開と信仰の諸形態」というのはなんだかわけわからん。
第2章は、ピウス9世、レオ13世の回勅「レールム・ノヴァールム」、第2ヴァチカン公会議、自慰と避妊と産児制限に対するカトリックの見解など。
第3章は、オスマン帝国時代の東方教会、北米のプロテスタンティズム、エキュメニズムと宗教間対話など。
というわけで、特徴をまとめると、
というわけで、結論としては、
アラン・コルバン編(浜名優美監訳、藤本拓也、渡辺優訳)、『キリスト教の歴史――現代をよりよく理解するために』、藤原書店、2010年、534頁、4800円+税。
原著はフランス語、sous la direction de Alain Corbin, "Histoire du Christianisme: Pour mieux comprendre notre temps," 2007.
アラン・コルバン他55名のフランスの歴史研究者たちが、キリスト教史の中の約80のテーマごとに執筆を担当して、知的好奇心はあるがキリスト教を知らないフランス人向けに、大まかなキリスト教史を、どちらかというとカトリックの歴史を中心に、編んだもの。
「この共同の著作は自分の持っている知識を深めたいと思っているキリスト教徒の読者の興味を引くと思うが、それ以上に、単なる知的好奇心から、あるいは自分の身の回りの環境と他者の文化をよりよく理解するために、これまで不透明であり続けた一つの宗教の歴史を知りたいと願うすべての人の関心を引くことになるだろう。」
(「まえがき」p.24)
1項目平均6頁弱。
目次は、藤原書店のページにある。
構成は標準的で、古代、中世、近代、現代の4部構成。
◆
第Ⅰ部
第Ⅰ部は1~5世紀。
第1章~第3章は、ナザレのイエスからパウロの伝道、ローマ帝国による迫害からテルトゥリアヌス、ローマ帝国のキリスト教国化。
第4章は「信仰を規定する」として、異端と正統、グノーシス主義とマニ教、4~5世紀の教義の形成。
第5章は「キリスト教組織の構築」として、使徒言行録以降の職制の発展、洗礼準備教育、聖餐、教会建築、週と暦、貧者への慈善活動、禁欲と修道院。
第6章は、バシレイオス、ナジアンゾスのグレゴリウス、クリュソストモス、ヒエロニムスと『ウルガタ』、アウグスティヌス。
第7章は、ローマ帝国内外のキリスト教の広がり。
第Ⅱ部
第Ⅱ部は中世(5~15世紀)。
「暗黒伝説でも黄金伝説でもなく」という副題のもとに、「安定化と拡大」、「肯定、異議申し立て、司牧の応答」、「救いに向けての尽力」の3つの大きなカテゴリーを立てる。
第1章「安定化と拡大」では、聖ベネディクトゥス、大グレゴリウスから、東方と西方の一致と差異、聖ベルナルドゥスとシトー会、そして、大聖堂について。
第2章では、十字軍、カタリ派(「善き人びと」とカギ括弧付きで表記)などの異端、異端審問、中世の歴史観・終末への関心、第4ラテラノ公会議、アッシジのフランチェスコ、托鉢修道会、トマス・アクイナス。
第3章「救いに向けての尽力」では、煉獄の概念、聖人崇拝・聖遺物、巡礼、聖母マリア(ノートルダム)、慈善事業の急増、聖体崇敬、ヤン・フス、神秘主義、『キリストにならいて』。
第Ⅲ部
第Ⅲ部は近代(16~18世紀)。
第1章は宗教改革で、エラスムスとルター、急進派、カルヴァン、英国国教会のわずか4項目というごく簡単な記述。
第2章は「敵対と闘争」で、イグナティウス・デ・ロヨラ、イエズス会、異端審問所の変化、典礼、ジャンセニスムなど。
第3章はアメリカ、アジア、アフリカへの宣教、キリスト教教育、トリエント公会議、ローマとジュネーヴの比較など。
第4章はバッハ、聖書批評学の誕生(「聖書考証」という訳語はないだろう)、プロテスタントの敬虔主義や大覚醒など、守護聖人、ロシア正教。
第Ⅳ部
第Ⅳ部は現代(19~20世紀)
第1章の「聖書註釈の展開と信仰の諸形態」というのはなんだかわけわからん。
第2章は、ピウス9世、レオ13世の回勅「レールム・ノヴァールム」、第2ヴァチカン公会議、自慰と避妊と産児制限に対するカトリックの見解など。
第3章は、オスマン帝国時代の東方教会、北米のプロテスタンティズム、エキュメニズムと宗教間対話など。
◆
というわけで、特徴をまとめると、
・通史と言うよりは、項目ごとの読む事典という感じかも。
・古代と中世は割と主要な項目を取り上げている感じがする。
・中世は、主要な項目を三つに区分する観点が面白い。
・近代・現代はカトリック中心だが、かなり独特の限定された項目に絞っている感じ。
・「現代をよりよく理解するために」という副題が付いていて、バッハの項目とか産児制限に関するカトリックの見解などの項目が立てられてはいるが、特段、政治や経済、文化などの領域における現代の諸状況とキリスト教(カトリック)との関係を述べているという感じではないように思う。
というわけで、結論としては、
・日本のプロテスタントの信徒がキリスト教史を学ぶのに最初に読む本ではない。
・ある程度、勉強した後で、項目を選んで知識の隙間を埋めるのには役立つかもしれないという感じ。
・必読とか推薦とかではなく、まあ別に読まなくても良いだろう。
2016-05-20 22:34