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『旧約聖書を学ぶ人のために』 [書籍紹介・リスト]

『旧約聖書を学ぶ人のために』世界思想社並木浩一、荒井章三編、『旧約聖書を学ぶ人のために』、世界思想社、2012年、12+338+4頁、2300円+税。

聖書学的な旧約聖書学への入門というよりも、旧約思想への入り口の紹介という感じだが、入門者でなくても有益な示唆を得ることができる。それは、編者がテーマに沿って適切な執筆者に依頼したからであろう。「旧約聖書の中心的メッセージに焦点を絞り、その歴史的、文化史的、信仰史的な文脈を重視する叙述」を目指した(「はじめに」、p.ii)

以下、執筆者とタイトル。コメントは目次の詳細の主なものだったり、私なりのキーワードのメモだったり。


Ⅰ 旧約聖書へのアプローチ――その成立・展開と風土――

荒井章三「旧約聖書とは何か」
名称、成立と区分、翻訳、キリスト教と旧約聖書など

月本昭男「旧約聖書の世界」
自然風土、歴史風土、宗教的風土



Ⅱ 旧約聖書は歴史をどう描いているか

大住雄一「民の選びの歴史」
歴史の共通理解は教育によって育てられる(申命記6:20-25)、選びの歴史(申命記7章)、カノニカル(正典的)な歴史、礼拝で共有される歴史、申命記的歴史、六書説と四書説、選びの主への排他的忠誠を徹底させるのか、それとも、被造世界全体の神との関係の回復を目指すのか、二つの歴史思想

小友聡「試練と摂理」
イサク奉献の物語(創世記22章)、過酷な試練の中で服従と信仰によって摂理を知る、ヨセフ物語(創世記45章)

関根清三「終わり・黙示・メシア――終末論の諸態と批判的展望――」
この論で課題として残された問題については、『旧約聖書の思想 24の断章』(岩波書店、1998年、改訂新版が講談社学術文庫、2005年)の19~20章で、特にアモス書に即して展開しているとのこと。



Ⅲ 旧約聖書は人間をどう見ているか

人と人との関わり

勝村弘也「男と女」、「親と子」
サムソン(士師記13-16章)、雅歌、アブサロム、箴言

佐々木哲夫「友情・兄弟」、「隣人・外国人・敵」
ダビデとヨナタン、イサクとイシュマエル、エサウとヤコブ、ルツ記の慈しみ(ヘセド)と責任


人と神との関わり

並木浩一「罪の赦しに生きる人――原初史の人間像――」
アダムとエバ、カイン、ノア

並木浩一「神に問う人――神議論的問いを深めた人々――」
アブラハム(創世記18章)、エレミヤ、ヨブ

飯謙「神を賛美する人――「詩編」――」
嘆きの歌、信頼の歌、たたえの歌、表題と構造



Ⅳ 旧約聖書は現実をどう捉えているか

山我哲雄「自然と人間」
神の被造物としての人間と自然――<神>対<人間・自然>(神の超越性、創造と秩序など)、神の似姿としての人間――<神・人間>対<自然>(人間による自然の支配について)、自然の中に現れる神の力――<人間>対<神・自然>(ヨブ記など)

鈴木佳秀「契約と法」
律法とモーセ、十戒、契約の書、申命記における国家と法、神聖法典

大島力「預言者の現実批判」
預言者による王国批判と宗教批判

鈴木佳秀「戦争と平和――聖戦――」
聖戦、聖絶、シャローム



Ⅴ 旧約聖書研究史・文献紹介

山我哲雄「旧約聖書研究史・文献紹介」
2段組34ページに渡り、研究史・研究動向を紹介しつつ主要文献を紹介、注解書も紹介している。これだけでも牧師必携。




タグ:旧約聖書

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