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晴山陽一『すごい言葉』1 [読書メモ]

晴山陽一、『すごい言葉――実践的名句323選』(文春文庫408)、文藝春秋、2004年。

323の「名句」を数行の解説付きで紹介。英文も併記されている。人名索引もあるのがよい。

晴山が出会った言葉の他、英語圏のさまざまな引用句事典から多く引かれているようだ。



p.33
「人間は、メッセージを忘れたメッセンジャーである。」
(アブラハム・ジョシュア・ヘシェル『人間とは誰か』(1965)より)

ヘシェルの表記は一般には「ヘッシェル」。また、「アブラハム・ジョシュア」は英語だか何だか分からないよう。。。

ヘッシェルはポーランドのワルシャワで生まれ、ベルリン大学に提出したドイツ語の学位論文を、後にアメリカで英訳・改訂して出版した。その邦訳が『イスラエル預言者』(上下2巻、並木浩一監修、森泉弘次訳、教文館、上下とも1992年)で、その邦訳書での表記は英語読みで「エイブラハム・ジョシュア・ヘッシェル」。

人間が伝えるべきメッセージは何であるか。ヘッシェルがユダヤ教の神学者であることからすれば、それは主なる神からのメッセージであろう。



p.43
「生きていくためには、記憶力よりも、その対極にある“忘れる力”のほうが不可欠である。」
(ショーレム・アッシュ『ナザレ人』(1939)より)

アッシュはポーランドの作家。ユダヤ人である彼が「ナザレ人」という小説を書いているのは興味深い。アッシュの作品の邦訳って、戦前を別にすれば、ぜんぜんないようだ。


p.105
「知識の島が大きくなるほど、不可思議の海岸線が長くなる。」
(ラルフ・W.ソックマン)
ソックマンは、米国のメソジスト教会の牧師(1889-1970)とのこと。典拠は、Laurence J. Peter Compiled "Quotations For Our Time," 1977より。おお、あの「ピーターの法則」のローレンス・ピーターが集めた引用句集だ!

ローレンス・J.ピーター、レイモンド・ハル(田中融二訳)、『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』、ダイヤモンド社、1970年。
最近は新訳があるようだ。 渡辺伸也訳、2003年。



p.106
「持論を持てば持つほど、ものが見えなくなる。」
ドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースの言葉とのこと。
自分もそうだが、自分の考え方に固執してしまうと、他者に耳を傾けることができなくなる。逆に、他人が己の考えに固執していてこちらの意見に耳を傾けてくれず、いらだったり失望したりすることもある。日本の総理大臣に対しても。


p.112
「教育は、学んだことがすべて忘れられた後に残る“何か”である。」
心理学者B.F.スキナーの言葉。これも、ローレンス・ピーターの引用句集より。
信仰も、三位一体とか贖罪とか終末論とか、理屈をすべて忘れたときに、いかに主なる神への信頼に生きているかということかもしれない。


(続く)


タグ:一般の新書

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