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日本イエズス会版 キリシタン要理 [書籍紹介・リスト]

亀井孝、H.チースリク、小島幸枝、『日本イエズス会版 キリシタン要理――その翻案および翻訳の実態』、岩波書店、1983年、11+300+127頁。

亀井孝の亀の字はシフトJIS:EA9D、Unicode:U+9F9Cの「龜」。

ローマのCasanatense文庫にある1600年国字本に対するこの本での表記は「カサナテ本」。


第一部 研究篇

第一章は、「カテキスモ」の意味や要理書の発展について。宗教改革に対するカトリックでの教理書の歴史など。

第二章は、日本におけるドチリナの最初としてフランシスコ・ザビエルが作った29箇条の小ドチリナの話(現存しない)、ジョルジェが公教要理を作った経緯、1566年版のジョルジェのもの(ポルトガル語)を基礎に日本語に訳され、日本での印刷・出版についてなど。

ポルトガル語の原書が児童を対象としていたのに対し、日本語訳では成人を対象として翻訳された。
また、原書では、幼児洗礼を受けた子供たちがテキストを暗唱していることを前提にして教師の質問に答える形式であったものを、日本語訳では逆に生徒が質問し教師が答える形式に変更された。
その他、日本人向けに省略したり説明を付加したりした部分がある。
「ケレド」(使徒信経)の説明の部分では、ポルトガル語原書では教皇を頭とする教会の教えとして説明されているところを、日本への布教の観点から、使徒の教えとして扱われている。その章立ての違いなど。

第三章は、日本語のドチリナとポルトガル語本(ジョルジェのドチリナ、1602年)を比較し、翻訳できない用語をラテン語の読みで記したところがあるとか、その際に複数形の語尾はどうしたかとか(たとえば「さからめんと」が「さからめんとす」となっている箇所があるとか)。

第四章は「翻訳の文体」として疑問詞の訳し方などの詳細な分析。

第五章では、前期版(1591年ヴァチカン本)と後期版(1600年カサナテ本)の表記を比較して、仮名遣いのちがい、モノグラム(「でうす」とか「きりしと」を記号で書く)の使用の違い、単語の言い換え、語順の変更、てにをはの変更などなどを「翻訳の成長」と題して細かく分析している。


第二部 資料篇

資料篇には、
ヴァチカン図書館蔵の1591年の「どちりいなきりしたん」、すなわち国字本のものの翻刻(p.207-300)

および

M.ジョルジェ(Jorge)のポルトガル語の「ドチリナ・キリシタン」(1602年大英図書館蔵)の影印と翻訳(後ろからp.1-127)

が収められている。


1591年「どちりいなきりしたん」国字本の翻刻には、カサナテ本(1600年の国字本)との相違、東洋文庫蔵本(1592年ローマ字本)、水戸彰考館蔵本(1600年ローマ字本)との相違が注で示されているが、短い語句の相違はその文言が記されているものの、大きな変更については「増補あり」とか「追加説明あり」とか「ほぼ全面かき改め」などと記されている。

また、これら二つの版の対応箇所が分かるように、それぞれの部分ごとに記号が付されている。



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