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ロマン・ロラン「先駆者たち」 [書籍紹介・リスト]

ロマン・ロラン全集18.jpg1.
ロマン・ロラン(Romain Rolland)『ロマン・ロラン全集18 エセーⅠ 政治論』、みすず書房、1982年、678+22頁。

1914年から1935年の間に新聞・雑誌などに掲載された社会的・政治的な発言集4冊の邦訳から成る。

宮本正清訳「戦いを超えて」(Au-dessus de la Mêlée, 1915)
山口三夫訳「先駆者たち」(Les Précurseurs, 1919)
新村猛、山口三夫訳「闘争の15年(1919-1934)」(Quinze ans de Combat, 1935)
蛯原徳夫訳「革命によって平和を」(Par la Révolution, la Paix, 1935)

山口三夫による「解説 ≪力≫に対する≪精神≫の闘い――ロマン・ロランの≪政治≫原理」


2.
さて、ロマン・ロランの言葉として有名な
「理想主義のない現実主義は無意味である。現実主義のない理想主義は無血液である。」
の出典はどれか。

この中の「先駆者たち」であることはよく知られている。しかし、「先駆者たち」も様々な発言集である。いったい、その中のどれであるのか。

それは、「先駆者たち」の14番目、「スイスの青年たち」という、1917年6月にジュネーヴの雑誌「ドゥマン」1917年7月号に掲載された文章の序論のDの冒頭に出てくる(邦訳p.170)。この「スイスの青年たち」は、ロマン・ロランの発言というよりも、スイスの青年たちの思想を報告するために、彼らが行った「諸列強の帝国主義とスイスの役割」という討論を要約したものである。


3.
「理想主義のない現実主義は無意味である。現実主義のない理想主義は無血液である。」という言葉は、スイスにとって脅威となっている帝国主義をどのような観点で考えるかについてまとめた文章の冒頭である。この後は次のように続く。

「真の理想主義は人生全体を欲し、その全体的な実現を欲する。それは、人間の良心と諸事実のなかに生きている現実のもっとも深い認識である。そしてこの認識がわれわれの良心の武器である。」



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