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リンカーン(5)『三分間』1 [読書メモ]

ゲリー・ウィルズ『リンカーンの三分間』共同通信社ゲリー・ウィルズ(北沢栄訳)、『リンカーンの三分間――ゲティズバーグ演説の謎』、共同通信社、1995年、口絵4+376+索引5頁。

原著:Garry Wills, "Lincoln at Gettysburg : The Words That Remade America," Literary Research, Inc., 1992.
1993年ピュリツァー賞受賞作。



著者の日本語表記は、「ギャリー・ウィルズ」とされることもある。たとえば、ギャリー・ウィルズ(志渡岡理恵訳)、『アウグスティヌス』(ペンギン評伝双書)、岩波書店、2002年。

また、Gettysburgもいろんな日本語表記があるが、『リンカーンの三分間』では「ゲティズバーグ」と表記されている。


■ 全体の構成

228頁までの本文は、プロローグ、五つの章、そしてエピローグ。付録が三つ。46ページにわたる詳細な注付き。


「プロローグ」では、ゲティスバーグでの戦死者の遺体とその埋葬のありさまが生々しく記されている。


「第1章 ギリシャ復興の弁論」から

■ エドワード・エヴァレットについて

 エヴァレットは、リンカーンのゲティスバーグ演説の前に2時間の演説をした人。

 エヴァレットはハーバード大で神学を学び牧師になったが、大学に呼び戻され、彼のために新設された古代ギリシャ研究のポストに就き、ゲッティンゲン大学に留学した。エヴァレットは古代ギリシャの雄弁術を身に着けて、優れた演説によって、下院議員、マサチューセッツ州知事、上院議員(途中、ハーバード大学長)、国務長官を務めていった。(p.38-39)


■ 「演説」というものについて

 ゲティスバーグでの式典は国立墓地の奉献式であったが、そこでの演説は単なる挨拶やスピーチではなく、「追悼演説」という古代ギリシャからの伝統に沿ったものであった。

 追悼演説に限らず、演説やスピーチと言われているものは、偉いお方のお話をありがたくお伺いして、終わったらすっかり忘れてしまうようなものではなく、古代ギリシャの雄弁家たちのように、人民の政治的アイデンティティを形成する力であった。(p.47あたり)

 そして、そのような演説では、ギリシャの雄弁術に由来する修辞が駆使されていた。

 また、演説は数時間にわたるのが当たり前で、「長さや調子においては当今のロック・コンサートとさほど変わりはない。」(p.14)

 エヴァレットは特に、そのような演説に長けた人物であった。


■ リンカーンのゲティスバーグ演説の技法について

 リンカーンのゲティスバーグ演説では、古代ギリシャの修辞法のうち、対照法が特徴的に用いられている。中でも生と死の対照が強調されている。(p.53-57)

また、古代ギリシャの弔辞の構成(死者への賛美と生きている者への助言)と語られるテーマ(言葉と行為、儀式、父祖たち、大地からの生誕、存在証明、栄誉など)に、リンカーンもこの演説でたどり着いている。(p.58-62)


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