オットー『聖なるもの』(2) [書籍紹介・リスト]
3.邦訳は次の三つ
最新の久松訳を中心にしつつ、他の訳を参考にするという感じか。
以下、新しい順。
(1)久松訳
久松英二訳、岩波文庫青811-1、2010年。465頁+8頁、1197円。
付録は「ヌーメン的詩歌」と「補遺」。原注pp.375-400、訳注pp.401-433。解説はpp.435-465の約30頁にわたり、巻末にオットーの主要業績リストと人名索引。
(2)華園訳
華園聰麿(はなぞの・としまろ)訳、創元社、2005年、357頁、3360円。
著者名の表記はルードルフ・オットー。原注は各章末に置かれ、全ページの下段3cmちょっとが訳者脚注のスペースになっている。
原著の付録にあるオランダのヨースト・ファン・デル・フォンデルの「天使賛歌」とユダヤ教の新年祭の頌歌「Melek Eljon」のドイツ語訳、また本文に関する短い補注(これらは久松英二訳ではみな「付録」として訳出されている)は、一部を訳注で取り上げたほかは割愛したとのこと。
その代わり、オットーの論文集『超世界的なものの感情』から「仏教におけるヌミノーゼ・非合理的なもの」の一部が「仏教におけるヌミノーゼなもの――坐禅におけるヌミノーゼな体験」として付け加えられている。
pp.341-351が「訳者あとがき」、人名索引だけでなく事項索引があるのは便利。
(3)山谷訳
山谷省吾(やまや・しょうご)訳、岩波文庫青428(6958-6960)、1968年、325頁。後に青811-1。
オットー自身による「序文(29-30版への)」(1936年1月)あり(久松訳にはない)。
「附属論文」として、オットー『ヌミノーゼに関する論文集』から「預言者の神体験」、「随伴せる徴」、「霊的経験としての復活の体験」の三論文を「著者の意向によって、選出翻訳したもの」(解説、p.321f)。
原注は本文の各章末に置かれ、訳注はpp.315-317のわずか3頁。解説はpp.319-325。
同じ岩波文庫から久松英二による新訳が出たので、山谷訳は絶版。
オットー『聖なるもの』