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カント「永遠平和のために」(2) [書籍紹介・リスト]

2.主な邦訳は次の3つ。

(1)宇都宮芳明訳『永遠平和のために』(岩波文庫青625-9)、岩波書店、1985年、138頁、525円。
 副題は「一哲学的考察」と訳されている。訳注は80箇所。訳者による解説は14頁。全体でも138頁の薄い本。さすがに他の訳に比べて訳文は硬く、活字も小さい。

(2)中山元訳『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編』(光文社古典新訳文庫)、光文社、2006年、387頁、680円。
「啓蒙とは何か――「啓蒙とは何か」という問いに答える」、「世界市民という視点から見た普遍史の理念」、「人類の歴史の憶測的な起源」、「万物の終焉」、「永遠平和のために――哲学的な草案」の5編を収録。訳者による小見出しが適宜付されていて、読みやすい。「永遠平和のために」にはpp.147-273で、50箇所に訳注が付けられている。巻末には、6頁の「カント年譜」と、pp.280-384の100頁を超える訳者による「解説――カントの思考のアクチュアリティ」。
 カントが「共和制」や「民主制」をどのような意味で用いているかについては、中山元による解説を読む。

(3)池内紀(おさむ)訳『永遠平和のために』、綜合社(発売:集英社)、2007年、114頁、1365円。
 是非とも若い人に読んでもらうべく企画され、前半50頁は『永遠平和のために』の中からのアンソロジーとカラー写真、pp.53-90が本文で、200年以上も前の文体は捨て、学問的措辞や用語にこだわらず、検閲官用の構文は無視し、なるたけ簡明な日本語で訳された(訳者による「解説」p.113)。注は付けず、原注も省略、宇都宮訳や中山訳と比較すると「超訳」とも言えるような訳文。二つの補説は抄訳、二つの付録は、アフォリズム風に抜き書き。全体で114頁、ハードカバー。

 というわけで、まず池内訳で入門したのち中山訳でじっくり読むか、中山訳で読んだ後に池内訳でポイントを確認するか。

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