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ミルトン『言論・出版の自由』 [読書メモ]

ミルトン(原田純訳)、『言論・出版の自由 アレオパジティカ 他一篇』(岩波文庫赤206-1)、岩波書店、2008年。

John Milton 1608.12.9-1674.11.8(キリスト教人名辞典による)

この邦訳が出た2008年は、ちょうどミルトン生誕400年にあたる。

次の2つを収録:
「言論・出版の自由――アレオパジティカ」(Areopagitica, 1644)

「自由共和国建設論」(The Readie and Easie Way to Establish a Free Commonwealth, 1660)

これらは、原田純訳編『イギリス革命の理念――ミルトン論文集』(小学館、1976年)に収録のものを全面的に改訳したもの。(訳者「解説」、p.195)




岩波文庫には旧版がある。

上野精一、石田憲次、吉田新吾訳、『言論の自由――アレオパヂティカ』岩波文庫、1953年。
最初は4943、白181、後に赤(32)206-1。

元は新月社、1948年。岩波文庫化に当たって、石田憲次が全面的に推敲した。翻訳の底本はコッテリル(H.B. Cotterill)の注釈書、随時ヘールズ(J.W. Hales)の注釈書も参考にしたとのこと。

ただ、この旧版のことには、原田純訳の新版ではまったく触れられていない。




『言論・出版の自由』はこれまで読み継がれてきたし、これからも読み継がれるであろう。議会多数与党によるマス・メディアへの介入、資本、人事、広告元の圧力、メディア側の異常警戒と自主規制、公安庁や自衛軍による個人の発言の隠密調査と監視、司法判断の不充分による言論の自己抑制、学校教科書と学習指導要領への政治的介入と不断的監督など、山積する今日の様々な課題に『言論・出版の自由』が深いところで答えてくれるからである。

(原田純「解説」、p.176。)




聖書の記事への言及や聖書にある言い回しの使用に関しては、注は十分とは言えない。

たとえば、

「ソロモンは多読は体を疲れさせる・・・」(p.28)はコヘレトの言葉12:12。

「目を上げれば田畑はすでに実りはじめている」(p.66)はヨハネ4:35。

「ミカヤがアハブの前でしたように・・・」(p.74)とは、列王記上22章あるいは歴代誌下18章の記事。

「人間は良い麦を悪い麦から、よい魚を悪い魚から完全に区別できません。それはこの世の最後に天使たちがする仕事・・・」(p.75-76)はマタイ13:29-30、39の毒麦のたとえ話。

などなど。

こういった個所のいくつかは、岩波文庫旧版ではちゃんと注に記されている。




ネットで見ることのできる英語の注付きの"Areopagitica":

米国ダートマス大学(Dartmouth College)の"The John Milton Reading Room"のサイトの中のAreopagitica

Notes by J.W.Hales, Oxford: Clarendon Press,1874. (Google Books)

Notes by T.G.Osborn , London: Longmans, Green, and Co.,1873. (Google Books)



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