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銀貨30枚の価値 [聖書と釈義]

 ユダがイエスを祭司長たちと長老たちに売り渡した「銀貨30枚」はどのくらいの価値であったのか。
Judas Returning the Thirty Silver Pieces by Rembrandt
1.聖書箇所
 ユダが銀貨30枚でイエスを売り渡したことは、マタイにのみ出てくる。マタイ26:15、27:3、9

2.諸説
 銀貨30枚がどのくらいの価値であったかについて、諸説ある。
(1)出エジプト記21:32から、奴隷一人分の値段。
(2)デナリオン銀貨一枚が一日分の賃金に相当する(マタイ20:2)ので、銀貨30枚はおよそ一月分の賃金。
(3)ある女性がイエスの頭に注いだ非常に高価な香油が300デナリオン以上であった(マルコ14:5、ヨハネ12:5)ことから、イエス自身はその10分の一で売られた。

3.諸説の評価
 しかし、(1)については、イエスの時代にはこの金額はそのおよそ十分の一の価値しかなかった(E.シュヴァイツァー、NTD)との説もある。(2)ではデナリオン銀貨と明確に語られているが、ユダが売り渡した金額は何の銀貨か記されていない。マタイは、必要なときには明確に価値を記している(10:29、22:19)。(3)については、マタイではきわめて高価な香油の具体的な金額は出てこない(マタイ26:9)ので、それとの対比は意図されていない。

4.銀貨30枚の価値は関心外
 結局、マタイによる福音書は、銀貨30枚がどのくらいの価値であったか、すなわち、ユダはイエスを高額で売り渡したのか、それともごくわずかな金で引き渡したのかについては関心を持っていない。しいて言えば、ある程度まとまった土地を購入できるほどの価値ということになろう(マタイ27:7)。

5.旧約の預言の成就
 銀貨30枚への言及は、ユダの裏切りの企ての記事にあり(26:14~16)、ユダがそれを返そうとした記事にあり(27:3)、そして、これらのことが預言者エレミヤの言葉の実現だとする記述に至る。27:9~10の言葉は直接エレミヤ書に現れる言葉ではなく、ゼカリヤ11:13やエレミヤ18:2~3、19:1、32:7~9など陶器師や畑を買うなどの連想でつなぎ合わせてエレミヤの言葉としたものであり、しかしそのようにされたことを通して、これらのことが旧約の預言の成就であると主張されている。

6.仕掛けられた小道具
 そうすると、銀貨30枚というのは、マタイ26:15の最初から、これらのことが旧約の預言の成就であることを示すために仕掛けられた重要な小道具であったのだ。

 というわけで、注解書の諸説に惑わされず、聖書そのものをよく読みましょう。

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