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カント「永遠平和のために」(1) [読書メモ]


1.インマヌエル・カント「永遠平和のために」(Immanuel Kant, ”Zum ewigen Frieden,” 1795.)は、すでに三批判書(『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』)を出した後の1795年に上梓され、翌1796年に第二の「追加条項」を加えた増補版が出版された(岩波文庫版の解説)。当時の条約の形式になぞらえて、最初に留保条項を書き、続けて「予備条項」と「確定条項」を記す。条約になぞらえた書き方がされていることや第二追加条項などを読むと、ユーモア(あるいは辛辣な揶揄)を感じさせられる。

 第1章では「予備条項」として「将来の戦争の原因となりうる要因が少しでも残っている条約は平和条約とはみなさないこと」、「国家の継承、交換、買収、贈与の禁止」、「常備軍を持たないこと」、「軍事国債の禁止」、「暴力による内政干渉の禁止」、「暗殺者の利用や降伏条約の破棄などの卑劣な戦略の禁止」の6つの禁止条項をあげる。

 第2章では永遠平和の実現に向かう具体的な「確定条項」として、国内法、国際法、世界市民法の三つの法的体制の整備が必要として、国内法としては共和的な市民体制、国際法としては諸国家の自由な連合に基づいた国際体制、世界市民法としては他国訪問権が保証されることの三つを挙げる。

 追加の「条項」として、「永遠平和の保証について」と「永遠平和のための秘密条項」の二つの補説、さらに付録として「永遠平和という観点からみた道徳と政治の不一致について」と「公法を成立させる条件という概念に基づいた道徳と政治の一致について」の二つ。

 それにしても「永遠平和」という日本語としてしっくりしない邦題は、誰が最初に考えたのだろうか。「恒久の和平」とでもした方が内容に即していると思うのだが。
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