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ヴァイツゼッカー『荒れ野の40年』(1) [書籍紹介・リスト]



1.ヴァイツゼッカーについて


リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー(Richard von Weizsäcker, 1920.4.15 - 2015.1.31)は、第六代の西ドイツ大統領(1984-1994)であり、二期十年の大統領在任中に東西ドイツが統一されたため、統一ドイツの初代大統領でもあった。

2.「荒れ野の四十年」について


「荒れ野の四十年」は、1985年5月8日のドイツ降伏40周年にあたっての連邦議会での演説。日本語訳は最初、雑誌『世界』1985年11月号に掲載された。その時『世界』の編集長だった安江良介がこの演説に「荒れ野の四十年」という題を付けたという。ドイツでは「五月八日演説」などと呼ばれている。(永井清彦編訳『言葉の力――ヴァイツゼッカー演説集』岩波現代文庫の「訳者あとがき」、p.238)。

3.「荒れ野の四十年」の翻訳


この演説の邦訳には、主として永井清彦のものと加藤常昭のものがある。永井清彦の翻訳は実際になされた演説の録音を元にしている。一方、加藤常昭の翻訳は刊行されたものを底本としている。

(1)永井清彦訳、『荒れ野の四十年―― ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説』岩波ブックレット767、2009、63頁、504円。訳者による「解説――若い君への手紙」付き。
 旧版は、『荒れ野の四十年 ヴァイツゼッカー大統領演説全文』岩波ブックレットNo.55、1986、55頁。永井清彦「翻訳に際して」という5頁の文章が巻頭にある。そして巻末には村上伸「ヴァイツゼッカー演説のいくつかの背景」。これらは新版にはなく、本文に対する注も全然違うので、旧版も見ておく価値あり。
 岩波ブックレットの新版と同一の訳が、永井清彦編訳、『言葉の力――ヴァイツゼッカー演説集』(岩波現代文庫/社会193)、岩波書店、2009、4+249頁、1050円に収録されている。これに収録されている演説は次の11編:
  荒れ野の四十年
  パトリオティズムを考える
  基本法――揺るぎない自由の保証人
  自由に堅く立つ
  変革期ヨーロッパの「徳」
  統一の日に――統一も自由も
  党派を超えて――ブラントを悼む
  暴力を排す
  無関心の名の、心に着せた外套を脱ぎ給え
  言葉の力
  水に流してはならない――ドイツと日本の戦後五十年

 これは、永井清彦編訳(とはいえ、関口宏道、片岡哲史、他の訳も含まれている)『ヴァイツゼッカー大統領演説集』(岩波書店、1995)をもとに、三篇を入れ替え、全面的に編者によって改訳されたもの。各講演題や各講演の前に置かれた訳者による短い解説も書き直されている。入れ替えは、「首都はベルリンに」、「障害者を校正に」、「ドイツへの信頼を」の替わりに、「暴力を排す」、「無関心の名の、心に着せた外套を脱ぎ給え」、「水に流してはならない――ドイツと日本の戦後五十年」が加えられた。最後の「水に流してはならない」は1995年8月7日の東京での演説で、『歴史に目を閉ざすな――ヴァイツゼッカー日本講演録』(岩波書店、1996)に収録されていた。新旧両著とも、演説がなされた時系列順に並べられている。旧著のほうの『ヴァイツゼッカー大統領演説集』の巻末の「訳者解説」は、「言葉の人」ヴァイツゼッカーを的確に知ることができる40頁の解説であって、文庫版にないのが残念。

(2)加藤常昭訳、『想起と和解――共に生きるために』、教文館、1988。この中に「一九四五年五月八日――四〇年を経て」と題してある。後に加藤常昭『ヴァイツゼッカー』(清水書院、1992)に若干改訂されて収録されている。
 加藤常昭によるヴァイツゼッカー関連の書籍は、
  加藤常昭著、『ヴァイツゼッカー』(センチュリーブックス人と思想111)、清水書院、1992。
  加藤常昭訳、『想起と和解――共に生きるために』、教文館、1988。(4つの演説集)
  加藤常昭訳、『良心は立ち上がる――ヴァイツゼッカー講演集』、日本基督教団出版局、1995。(演説集)
  加藤常昭訳、『ヴァイツゼッカーのことば』、日本基督教団出版局、1996。(アンソロジー)


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