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ゲーテ、ミュラー、ハルナック [宗教の神学]

1.ゲーテ"Maximen und Reflexionen"(邦訳は「格言と反省」とか「箴言と省察」とか)に次のような言葉がある。

「外国語を知らないものは、自分の国語についても何も知らない。」
高橋健二編訳『ゲーテ格言集』(新潮文庫赤15-6)、新潮社、1952、p.111。

「外国語を知らない人は、母国語を知らない。」
大山定一訳「ゲーテ格言集」 in 小牧健夫他編『ゲーテ全集 第十一巻』、人文書院、1961、p.164。

「外国語を知らぬ者は、自国語についても何も知らない。」
岩崎英二郎、関楠生訳「箴言と省察」 in 『ゲーテ全集13』、潮出版社、1980、p.360。

2.マクス・ミュラー(Friedrich Max Müller, 1923-1900)『宗教学入門』("Introduction to the Science of Religion," 1873)の中で、このゲーテの言葉が「一つの言語しか知らない人は、どの言語も知らない」として引用されている。
 この言葉は、例えばシェークスピアが自国語しか知らなかったから英語を知っているうちには入らないという意味ではなく、どんなに言語を巧みに用い、上手に表現できたとしても、言語とは何かという問いに対しては答えることができないという意味であると、ミュラーは言う。そしてこれを宗教学(ミュラーの表現ではthe science of religion)(比較宗教学の意味合いが強いようだ)にも当てはまるとして、「一つしか知らない者は、一つも知らない」(He who knows one, knows none.)と言う。つまり、山を動かすほどの信仰を持っていても、宗教とは何かという問いには答えられないということである。したがって、一つの宗教しか知らない者は宗教について何も知らないのである。
 マクス・ミュラー(湯田豊監修、塚田貫康訳)、『宗教学入門』、晃洋書房、1990年、p.11-12あたり。

3.アドルフ・フォン・ハルナックは、ベルリン大学の総長就任記念講演「神学部の課題と一般宗教史」(1901)で、ミュラーの言葉を逆にして、「この宗教(キリスト教)を知らない者は(宗教について)何も知らないが、この宗教をその歴史とともに知っている者はすべて(の宗教)を知っている」と言った。
 古屋安雄『宗教の神学――その形成と課題』、ヨルダン社、1986初版、1987第二版、p.126(p.170でも言及)。
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